オール電化住宅は環境にやさしい?
林 敏秋 (ワーカーズコープ エコテック)
自然エネルギーの話題が新聞紙上をにぎわすことが多くなった。太陽電池の生産と普及が世界一になったというニュースを聞いてからもう3、4年は経つ。結構なことである。だが、本当に手放しで喜んでいいのだろうか。
日本が世界一になった背景には国の補助金政策があったことは事実だが、採算を度外視して設置した市民の存在がなければ実現しなかったであろう。今年も補助金は継続され、順調な応募状況らしい。しかし、その伸びの殆どは訪問販売が中心で、さらに懸念すべきはオール電化機器がタイアップして販売されている点である。電力会社が旗を振って、ハウスメーカー、工務店、電気機器販売業者、太陽光発電設置業者すべてがオール電化を推進している。太陽光発電付きの住宅も販売され、九州のオール電化住宅は2001年段階で約88000件。96年からすると1.5倍の伸びらしい。
「クリーン」、「安全」、「安い」の謳い文句の元に消費者は、このオール電化ブームに何の疑いもなく迎合している。本当にクリーンで安全なのか。冷静に考えてみることが必要だ。そもそも電気というエネルギーは、大変高級なエネルギー源である。原子力発電や火力発電を例にとって考えてみると、100のエネルギーを投入して、電気になるのはせいぜい35〜40%である。じゃ残りのエネルギーはどこへ行っているのかというと、送電ロスが5%程度あるが、ほとんどは発電時に排熱として大気中に放熱しているのである。
原発の近海の魚が異常に大きいという話は有名である。これは原発の温排水が影響しているらしい。私達は、オール電化住宅にすんでクリーンでエコロジーだと思い込まされているが、何とおめでたいことか。発電している元までは誰も想像しないのである。
では、エネルギーの浪費ともいえるオール電化を何故、電力会社は推進するのか。誰でも抱くもっともな疑問である。それは電気が余っているからだ。この言い方は少し乱暴だ。電気の需要と供給にアンバランスがあるからだという方が正確だ。つまり電気の需要には大きな波がある。昼間と夜間、夏期と冬期で使う量がかなり違う。だが電力会社は電気事業法で需要があれば供給しなければならないと義務づけられている。そのために最大需要電力量(ピーク)を確保しておく必要がある。現在、事故隠しから原発が全停して夏期の大停電が問題になっている東京電力管内の話はまさにこの問題である。
だが、使わないときにはいらない発電機は止めておけばうまく調整できるのではないかと誰もが考える。しかし、現在日本の発電電力量の34%は原発である。原発は出力調整が簡単にはできない。日本の電気の需要のピークとボトムの差はかなり大きい。ボトムの需要がピーク時の45%になることもある。電力会社はいろいろ工夫して出力調整しているが、出力調整が困難な原発がベース電源となっているため夜間などはかなり電力が余る。さらにやっかいなことには余った電気はどこかへ捨てることができないのだ。揚水発電所などという形で貯めたりしているが、焼け石に水だ。結局、一般市民に無理矢理使ってもらうしかなくなる。時間帯別料金など優遇策をとって「どんどん電気を使え」という形になる。オール電化が推進される所以である。
オール電化で気になることがもう一つある。「IHクッキングヒーター」(電磁調理器)のことだ。高齢者がガスを使うのは危険であるということでIHを導入されている人も多いと思う。百歩譲って確かに高齢者には有効かもしれない。
だがIHには電磁波被曝の問題がある。電子レンジはまだ鉄板に覆われているのでIHよりはましだが、IHは長時間直近で調理しなければならない。疫学的には電磁波の健康被害(小児白血病の発生度合い)は厚労省も認めている。この点を明らかにせず「安全、クリーン」だけを売り文句に販売しているメーカーや販売業者には怒りすら覚える。
私はガス会社の回し者ではないが、エネルギー多元化の時代にあえて電気のみでエネルギーを統一しようという考えには同調できない。しかも、火を見ずに育つ子供たちのことを考えると文化的にも大きな違和感を感ずる。時代遅れの技術となった原発が日本でも遠くない将来に全廃されると思うが、その時オール電化住宅が過去の遺物として冷ややかにみられる時代がやってくるかもしれない。
もし、これからオール電化を導入しようとしている方がおられるとしたら、是非お考えいただきたい。目先のことに目を奪われずに、想像力を働かせ、将来世代のことを考えてエネルギーの消費を実践されることを。
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オーストラリアやアフリカに棲むシロアリの中には高さが8〜9mにもなるアリ塚を造るものもいる。外気温は0〜45℃にもなる過酷なサバンナで、土や水など自然のものを利用することでアリ塚内部は常時30℃程度に保たれているという。 |
かんくま通信43号(2003/06/18)に掲載