ソニー株式会社へ、熊本工場(菊陽町)進出について、
環境負荷を確認する公開質問(2001年3月)と、
それに対する回答書(2001年5月1日)
(原文をそのまま掲載しています)


ソニー株式会社 社会環境部 御中

環境ネットワークくまもと
水環境会議熊本

拝啓、御社に置かれましては、益々ご清栄のこととお喜び申し上げます。

 初めてお便りを申し上げます。当会は熊本県内の環境保護活動NGOのネットワークと一般市民への環境保護活動の拡大を目的に結成されたNGOです。御社の熊本工場進出に関して、環境保全に関するご質問を致したく、今回お願いをするものです。
 今回、御社は半導体および電子機器の生産拠点として、熊本県合志町に熊本工場を計画され、現在、工場の建設に着手されております。御社は「環境保全」を経営の柱に据えられた、日本国内の各企業各社に先じた国際的な運営を行われており、熊本県民の一般的な感想としては良い企業へ進出頂いたとと歓迎を致しております。しかし、一方でその工場進出における具体的な「環境負荷」については分かっておらず、私たち環境保護に関心のある市民は不安を持っております。

 まず、熊本の水環境保護についての背景を簡単にご紹介致します。
熊本市とその周辺は、約70万人が飲料水の100%を地下水に依存する、全国的にもまれな素晴らしい環境を有する地域であります。これは、阿蘇山の火山活動から生じた奇跡的な構造に依ります。また、水俣病を経験した県でもあり、水に関する環境保護活動が各地で古くから行われている地域でもあります。
 同封の「水防人物語」は、熊本県保険医協会の20周年記念事業として、当会が主体となり、水に関する活動を行っている環境保護NGO、各協会、企業へ学習会をお願いし、その学習会の内容から編集・製作した本です。これをご覧いただければ、熊本県内で「水」に関する活動が大きいことをご理解いただけると思います。
 企業からは、本田技研熊本製作所、お菓子の香梅、半導体事業からは九州NEC株式会社にお願いを致しました。半導体事業では大量な水、しかも「地下水」が使用されていることが分かっております。熊本市では地下水量の低下傾向を踏まえて大口の地下水使用企業へは使用量の公開を求めており、九州NEC殿では、使用量の公開に加え、水の再利用に積極的に取り組まれています。

 今回お願いを致しますことは、御社のホームページにも宣言されております、「ソニーは地球環境保全が21世紀における人類の最も重要な課題であると認識します」および、「ソニーでは、環境保全に関する情報は、企業が果たすべきアカウンタビリティー(説明責任)の中でも最重要要件の一つと考え、@正直にA誠実にB着実にC継続的に情報を・・・開示することを基本姿勢としています」の一環として、今回の計画について御社が把握されている「環境負荷」についての情報公開・ご回答をお願いするものです。以下の項目を中心としたご回答を文書にてお願いいたします。


1.水資源(特に地下水)の使用量。
2.薬液類などによる地下汚染対策。
  (地下水脈の上流に当たる立地となりますので、非常に気にしております)
3.薬液の使用量と廃液(薬液)の量とその処理方法。
4.排気の量(質)とその処理方法。
5.電気等のエネルギー使用量。
6.環境保全に関する御社のスタンスと情報公開について。
7.熊本サイトにおける環境管理の窓口部門とご担当者。

 この質問内容は当会のホームページ上に公開(3月末予定)を致します。また、頂きましたご回答もそのまま掲載を致します。この機会を、御社の環境保全に関する熊本県民への意思表示として、積極的なご回答を頂きますようによろしくお願い致します。

 ご多忙中とは存じますが、4月22日を目標としてお願いを致します。
最後になりましたが、今後とも「地球環境保全」や「地域環境」に配慮した企業として、世界のリーダーシップを取られるよう、ご活躍をお祈りいたします。

敬具


環境ネットワーク熊本 殿

2001年5月1日
ソニー株式会社 社会環境部
部長 松岡良樹

ソニーの熊本の新工場についての環境配慮に関心をお持ちいただきありがとうございます。下記のご回答申し上げますのでよろしくお願いいたします。

新工場では、局所クリーン化技術や、需要に応じて柔軟に生産能力を増強できるミニライン設計導入による省エネルギー対策、そして使用済み洗浄液などの再資源化を図り廃棄物ゼロエミッションの実現を目指していきます。生産量は2002年当初は月産約3,000枚*、2005年には月産約12,000枚*と約4倍を計画しています。(*300mmウエーハー)

*本回答中の数値データは、2001年4月時点における生産計画に基づき、推計したものであることを、何卒ご承知おき下さい。

1. 水資源(特に地下水)の使用量
水使用のほとんどは冷房用のクーリングタワーの蒸発水と半導体製造工程の洗浄用純水です。使用量削減のため洗浄排水のリサイクル設備を導入し、原水使用量を削減する施策をおこなっています。

【水使用量の見込み】
・ 工場で使用する水は場内の井戸と第2テクノパークが供給する工業用水を併用します。

・ 水使用量
 予想使用量(各年度末の予想水量 単位 m3/日)

年度 総水量 工業用水 場内井戸
2001 1700 350 1350
2002 2000 600 1400
2003 2300 700 1600
2004 2600 800 1800
2005 2900 900 2000
生産量: 2002年 月産約3,000枚*
2005年 月産約12,000枚*(*300mmウエーハー)


【主な節水対策】
・ 生産の立ち上がりと共に水の使用量が増えますが、以下のような対策を講じてまいります。
・ 節水型の製造装置の導入による使用水量の削減を行います。
・ 排水系統の細分化と濃厚廃液の回収による、排水再使用の効率改善を行います。
・ 高度な排水処理設備導入による循環再利用の徹底を行います。


2.薬液類などによる地下(土壌)汚染対策
ソニーの半導体工場は93年度までに塩素系有機溶剤を全廃しました。熊本工場もテトラクロロエチレン、トリクロロエチレン等の塩素系有機溶剤は一切使用いたしません。また地下水や土壌への汚染の未然防止のために多重の保護システムを導入します。

【主な地下(土壌)汚染対策】
・ 工程排水用水槽は水槽の上下側面の全面を点検できる構造とし、定期的に点検を実施し漏洩の危険性のないことを確認します。
・ コンクリート水槽及び薬品タンク設置エリアは水槽からの漏洩に対応するために耐薬品ライニングを実施します。
・ 万が一の漏洩事故を想定し漏水検知器を各所に設置し、これを常時監視します。
・ 環境管理のために水槽の周囲と敷地境界付近の複数地点の土壌と水を定期的に分析します。また、その結果は要求に応じて公開します。

3.薬液の使用量と廃液の量とその利用方法
熊本工場は建設当初から廃棄物ゼロエミションを目標としています。薬液使用量の抑制とともに、製造工程排水配管を26系統と細かく分け、異なる性状の廃液が混合されないような構造とすることで廃液のリサイクルが容易になるよう配慮しています。
回収した廃液はいろいろなルートで工業原料、セメント原料など資源として再利用する計画です。

【薬液の使用量 単位:リットル/日】

年 度 酸系 アルカリ系 現像液、溶剤他
2001 1,950 664 507
2002 3,037 729 1,390
2003 3,037 729 1,604
2004 3,752 803 1,965
2005 5,043 1,603 2,396


【工場排水の処理】
・ 工場内の排水は排水処理設備で処理されたうえ熊本北部地域下水道で最終処理されます。工場の処理済排水は法規制値(上乗せ基準を含む)よりも厳しい自主基準値を設定し管理します。

【主な廃液の処理方法】
廃液 ソニーでの処理・利用形態 外部での最終利用形態
酸系希薄排水 中和凝集沈澱 脱水汚泥をセメント原料化
アルカリ系希薄排水 中和凝集沈澱 脱水汚泥をセメント原料化
アルコール系有機溶剤 排水処理栄養剤に再利用
アルコール以外の有機溶剤 燃料化
濃厚廃酸 鋼材の酸洗浄剤、肥料原料
リン酸廃液 排水処理栄養剤に再利用
その他の廃液、廃棄物も有効利用を検討しリサイクル率99%以上を目指します。

4.排気処理
熊本工場の排気は、酸・ガス排気系統、有機排気系統、熱排気系統の3系統に大別され、それぞれの性状にあわせた処理をおこないます。

 【排気処理】
・酸・ガス系統 :水酸化ナトリウムで中和洗浄します。除去効率は95%以上。
・有機排気系統 :活性炭と触媒利用の除害装置で処理します。除去効率95%以上。
・熱排気系統 :有害ガスを含まない熱排気は40℃程度に冷却します。



5.電気等のエネルギー使用量
半導体工場は一般に多量のエネルギーを消費します。熊本工場では建設当初より省エネルギー型の半導体工場を目指しており、さまざまな省エネ施策を実施します。

 エネルギー使用量:
【電力使用量】

年 度 最大電力(kW) 年間使用量(MWh)
2001 15,000 60
2002 20,000 100
2003 23,000 115
2004 26,000 130
2005 30,000 145


【都市ガス】

年 度 最大流量(Nm3) 年間使用量(千Nm3)
2001 600 2,700
2002 700 4,300
2003 800 4,900
2004 900 5,500
2005 1,000 6,100



【主な省エネルギー対策】
・ 氷蓄熱システムの採用(1、000kW)
・ 電力監視システムによる常時モニタリングによる使用量管理
・ 回転機器のインバータ化による省電力化
・ 省エネルギー仕様の製造装置導入
・ 太陽光発電等の再生可能エネルギーの導入
・ ボイラー燃料は石油でなく天然ガスを使用

6.環境保全に関するスタンスと情報公開
ソニーは、私たちの事業活動が地球規模の環境問題とも関連があることを認識し、持続可能な経済発展のため、全世界で積極的に行動します。昨年10月に策定した環境ビジョンでは次のような理念を掲げています。

ソニーは地球環境保全が21世紀における人類の最も重要な課題のひとつであると認識します。

ソニーはたゆまぬ技術革新と創造的なビジネスの展開を通じて、地球環境保全と将来世代の夢が守られる持続可能な社会の実現に向け、積極的に貢献します。

ソニーは、あらゆる生命の生存基盤である地球環境の重要性を認識し、持続可能な経済発展をグループの最優先課題として取り組んでいきます。私たちの子どもや孫など将来の世代も、健康で豊かで平等で幸せな生活ができるように、この地球の限りある資源を大切に使っていきます。

ソニーは、お客様に品質・信頼性が高く性能に優れた商品、サービスを提供しつつ、エネルギーと資源の利用から生じる環境負荷を着実に減らします。少ない資源を使って、大きな付加価値を生み出すことで、人類と自然とが調和できる新たな道を模索します。

ソニーは複雑に広がる環境問題についてグループ社員全員が勉強を続けます。そして、ステークホルダーの方々と密接に協力し合い、今日の世界がより良い環境へ向かうよう努めます。

ソニーのホームページでもソニーグループ全体の様々な環境への取り組みを紹介しております。
  http://www.sony.co.jp/eco


7.熊本工場の環境管理窓口(工場操業まで国分が環境管理を担当します)

ソニーセミコンダクタ九州株式会社
国分テクノロジーセンター
ファシリティ管理部長
高木育生 (たかき いくお)
電話 :0995-47-3170
Fax :0995-47-3033
e-mail :takaki@common.kkb.sony.co.jp